『狼王ロボ シートン動物記より』について

シートン動物記の『狼王ロボ』。子どもの頃に読みました。その本は多分、児童向けに翻訳されているものだったと思います。今回はアーネスト・トンプソン・シートンが書いた『私の知る野生動物(Wild Animals I Have Known)(1898年)』の『ロボ - カランポーの王(Lobo, the King of Currumpaw)』の翻訳版を読みました。事実を基にしたフィクションです。では、あらすじを紹介。

シートンのもとに手紙が届いた。アメリカのニューメキシコ州カランポーで牧場経営をする知人からだ。「地域で、家畜がオオカミに殺される事件が多発している。動物の生態に豊富な知識を持つ君の助けを借りたい」という内容。シートンは牧場があるカランポーへ向かった。

到着したシートンは、現地の人々から「魔物」と呼ばれ恐れられるオオカミ・ロボの存在を知らされる。ロボはがっしりとした体格の巨大なオオカミだ。自分の倍以上の体重がある牛を引きずり倒す体力と、「悪魔が知恵を授けた」と称される知性を持ち合わせていた。今まで多くのハンターたちがロボに挑んだが、罠や策は全て見破られた。過去5年間で合計二千頭以上の牛と数多くの羊がロボの群れによって殺された。万策尽きた人々は、シートンに白羽の矢を立てたのだ。

シートンはロボの群れの追跡を開始した。ロボ自身も含め6頭という小さな群れだった。しかし群れのオオカミたちはいずれも大きく精鋭ぞろい。整然と統率され、鮮やかな狩りを行う。ロボの驚異的な賢さにシートンは驚嘆した。シートンは知恵を絞り、ロボを捕らえようとするが、いかなる仕掛けも通用せず、ロボの群れは人間を嘲笑うかのように罠をかいくぐった。

しかし、追跡開始から3ヶ月が経った頃、シートンはロボの群れの足跡を見て一つのことに気付いた。オオカミのリーダーは普通、他のオオカミが自分の前を歩くことを許さないのに、ロボは特定の1頭だけ自分の前を歩くことを許していた。そのオオカミは、ロボの群れの中で唯一のメスであり、真っ白な毛色をしている。「ブランカ」と呼ばれていた。ブランカはロボの妻ではないかと地元住民たちは噂していた。シートンは、ブランカを捕まえてオトリにすれば、ロボを捕獲できると考えた。捕獲の対象をロボからブランカへと変更。間もなくブランカは罠にかかり、投げ縄で絞殺された。

最愛の妻であるブランカを奪われ、冷静さを失ったロボは仕掛けた罠に捕まった。ブランカを殺され、鎖に繋がれたロボは、かつての荒々しさを失いつつも、与えられた食べ物や水を一切口にしないまま、誇り高く死んだ。その様子を見届けたシートンは、ロボの亡骸をブランカの亡骸の傍に置いてあげた。

子どもの私にはショックな結末でした。人間がかなり酷いことしていると思いました。この話は、読み進めると、人間が自分本位の存在で、寄ってたかってロボを追い込んでいくように見えるのです。

そして野生の狼であるロボの誇り高い生き様が、なんとも格好良く思えました。

当時、この物語に対して、シートンを非難する手紙がたくさん寄せられたそうです。頷けるエピソードです。

しかし、今になって考えてみれば、それこそがシートンの意図していたことだったように思えます。彼は「野生動物は気高く美しい」と少年少女に伝えたかったと思うのです。

おうちカフェ さんちゃん

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