映画「ANORA アノーラ」を観た

今回紹介するのは、先日(3/3)発表された2024年アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5部門を受賞した、現代の米国映画を代表する作品です。「R18+」指定ですが、皆に観てもらいたい秀作です。

(あらすじ)

ニューヨークで娼婦として暮らすロシア系アメリカ人のアニーことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。パーティーにショッピングにと贅沢三昧の日々を過ごした2人は、休暇の最後に、衝動的に結婚する。幸せ絶頂だったが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いて猛反発し、結婚を阻止すべく、屈強な男たち(トロス、イゴール、ガルニク)を2人のもとへ送り込んでくる。

屋敷から一人で逃げ出したイヴァンを探して、彼の後を追うアニーと屈強な男たち。一晩中探し回り、ようやく風俗店で泥酔していたイヴァンを確保した。時を同じくして、ロシアの両親がアメリカに降り立った。両親はイヴァンとアニーの結婚を絶対に認めないと宣言し、アニーは悲しくも苦しい現実を突きつけられるが…。

(感想など) ※ 物語の終末に触れています

娼婦の女性が金持ちの男性に見初められるという、一見”シンデレラストーリー”ですが、本作は『プリティ・ウーマン(1990年)』、『マイ・フェア・レディ(1964年)』、『美女と野獣(1946年・1991年・2017年等…)』のような展開にはなりません。決定的に違うのは、相手役のイヴァン(王子様)がダメ男ということです。いつか改心・成長するのかなと思っていたら、ダメ男のままでした。リアルな結婚をしても、アニーは深く傷ついたでしょう。そしてアニーは、イヴァンに対して愛や尊敬はなく、”金持ち”であること以上の価値を見出していないように見えました。

映画のなかで、娼婦(セックスワーカー)で生業を立てている人たちの描き方が印象的でした。多くの人は、自らの職業に真摯に取り組んでいました。社会のなかで辱められ、見下される事実と、仕事に献身的に、自分なりの倫理観をもち取り組む姿勢に、「もっと理解が必要なのでは」と思いました。

さて、物語のなかで、唯一、アニーのことを考えてくれたのは、屈強な男のうちの一人、イゴールでした。無関心のうちに与えられた仕事を始めた用心棒のようなイゴールですが、歪んだイヴァン一家に嫌気がさしてきます。誠実さの欠片もない一家に「アニーに謝るべきだ」とついに意見するイゴールは、傷ついたアニーに対して優しい目線と態度で接します。

ラストシーン。アニーはイゴールの胸の上で泣いてしまいます。それは単なるセックスではない”本当の一線”を超える自信がない自分、そして今までの悔しさがすべて押し寄せてきて、ラストの涙に繋がったのだと思います。物語の主人公の女の子に許されている特権は、感情に素直に傷ついてもいいということだと思います。傷つき、怒り、戸惑い、弱り、憔悴したのちに、泣くことが許されていることです。シンデレラストーリーだろうとなんだろうと、プリンセスを夢見る女の子は、きっとそうです。

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