「清廉潔白の廉だよ」

中学一年生のとき、国語の教科書に載っていたフレーズです。40年以上経った今でも覚えています。しかし作品名は忘れていました。今まで生きてきて「正しくいよう」と思う度に、このフレーズだけを思い出していました。

最近、偶然わかりました。「うた時計」(作者 新見南吉)です。ではあらすじを紹介します。

2月のある日、淋しい道を、34~35歳の男と、12~13歳の少年が同じ方向へ歩いていた。男が話しかけて、自然に会話が始まった。

少年の名前は『れん』。「清廉潔白(せいれんけっぱく)の廉だよ。清廉潔白というのは、何も悪いことはしないので、たとえ神様の前へ出ても、巡査に捕まっても平気だ」と言う。男はニヤリと笑った。

『れん』は人なつっこい少年だった。「寒いから」と、「男のオーバーのポケットに手を入れてもいい?」と訊いてきた。「れん」がポケットに手を入れると、中から美しい音楽が流れ出して、男は少しだけ慌てた。

それは、うた時計(現在のオルゴール)の奏でる音色だった。『れん』はこのうた時計のことを知っていた。それは『れん』のよく遊びに行く薬屋にあるものと同じだった。薬屋のおじさんは「うた時計を聞くと、昔、家を飛び出してしまった息子の周作のことを思い出すのだ」と言う。

『れん』と男は分かれ道で別れた。『れん』は一人になるとぴょこぴょこ跳ねながら歩いた。男は『れん』を後ろから追いかけてきて話しかけた。「実は夕べ、薬屋に泊めてもらったのだが、間違えて時計を持ってきてしまった、この時計を薬屋に返しておいてくれないか」。

『れん』は時計を受け取った。「人は清廉潔白でなければならないよ」と男はまた去って行った。

再び『れん』が歩き出すと、今度は自転車が一台、後ろから追っかけてきた。それは薬屋のおじさんだった。「息子が昨日10年以上ぶりに戻ってきた。改心して真面目に働くといっていたのに、時計を盗んでまた出て行った。だから息子の周作を追ってきたのだ」と言う。

『れん』は言う。「間違えて持ってきてしまったんだよ。人は清廉潔白でなければならないと言っていたよ」。老人の手に渡されたうた時計が、また美しく歌い出した。老人の目には涙が、野の果てには白い雲が、浮かんでいた。

新品の靴を履いて、ぬかるんだ道を歩き始めるが人生で、「靴が心」と仮定します。人生とはドロ道で、人は心を汚さずには生きて(歩いては)いけません。その都度、靴を洗って、心をキレイにして、また歩き続けます。人がずっと清廉潔白であり続けることは難しいです。そして、人格の優れた高齢者もたくさんいます。いつも主体的に、自分の力で靴を洗うことができる人は素晴らしいけど、そんな人ばかりではありません。そしてたまに「清廉潔白の廉だよ」と言える人とめぐり逢います。この世界には清廉潔白なものがある。それに触れることで心が洗われることがあります。

今日の切り絵は「うた時計」の主人公の「清廉潔白の廉」です。

おうちカフェ さんちゃん

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