棟方志功の「二菩薩釈迦十大弟子」:展覧会『砂川七郎コレクション展』を観て①
私は、千葉県柏市は住みやすい、とても良い街だと思っています。ただ一つの不満は、人口約43万人の中核市である柏市なのに、市立の美術館や博物館がないことです。
さて、柏市で生まれ育った実業家の収集品を紹介する展覧会「砂川七郎コレクション展」が8日まで、柏高島屋で催されています。目玉は、世界的な版画家、棟方志功の「二菩薩釈迦十大弟子」と人間国宝だった芹沢銈介の漆による唯一の作品「釈迦十大弟子尊像」です。「えっ、柏で見られるの? しかも無料」。私は嬉しくていそいそと出かけました。
今日の切り絵は、その展覧会で観た、棟方志功の『二菩薩釈迦十大弟子・阿那陀の柵(にぼさつしゃかじゅうだいでし・あなんだのさく)』も模倣です。ただ真似をするだけでは、面白くないので、色を付けてみました。今日は棟方志功のこの作品について書きます。
彼はこの代表作「二菩薩釈迦十大弟子」の制作中、「私が彫っているのではありません。仏様の手足になって、ただ転げ回っているのです」と言いました、10体の大作を下絵なしで一気に掘り進め、僅か1週間で仕上げたそうです。10体とは、目鍵連(もっけんれん)、舎利弗(しゃりほつ)、優婆離(うぱーり)、須菩提(すぼだい)、阿難陀(あなんだ)、羅睺羅(らごうら)、魔訶迦葉(まかかしょう)、阿那律(あなりつ)、富楼那(ふるな)、迦旃延(かせんねん)を指し、その両端に普賢延命菩薩(ふげんぼさつ)と文殊止利菩薩(もんじゅぼさつ)が配されています。
さて切り絵の「阿難陀 (あなんだ)」についてです。この人は、お釈迦様の教えを一番よく聞いたと言われています。ずっとお釈迦様の秘書役だったこの人は、十大弟子中一番のハンサムで、女性たちに人気がありました。いつもお釈迦様のそばで教えを聞いていたのに、なかなか悟れなかったのは、やはり女性問題が多くて、煩悩が消えなかったからとも言われています。
文字の最期に付く、「柵」とは四国の巡礼者が寺々に納めるお札のことも意味しているようです。お寺で願いをこめてお札を納めるように彫った棟方の姿勢が、この文字に要約されています。
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