映画『アンダーカレント』を観て

タイトルの「アンダーカレント(Under current)」。日本語の意味は「表面の思想や感情と矛盾する暗流」です。この作品は大きく括ればラブストーリーだと思いますが、人の本心や想いは謎に包まれています。そういう意味ではミステリーだと思いました。「人をわかるって、どういうことですか?」と映画は問いかけてきます。では簡単にあらすじを紹介します。

女主人として銭湯を切り盛りしていたかなえ(真木ようこ)は、夫である悟(さとる・永山瑛太)の突然の失踪に途方に暮れていた。しばらく休業していたが、頑張らねばと銭湯を再開したそんな折、かなえのもとに、堀(ほり・井浦新)と名乗る男が「働きたいのですが」と現れた。堀は自分のことを一切語らず、ただ黙々と仕事に打ち込む。彼は銭湯に住み込みで働くこととなり、2人の奇妙な共同生活がスタートする。夫が失踪し、傷ついていたかなえだが、堀との穏やかな時間に少しずつ癒されていく。

一方で、かなえは胡散臭い探偵、山崎(やまさき・リリーフランキー)に夫の悟の捜索を依頼する。行方を捜す調査はすすむにつれ、かなえは夫の悟の、誰も知らない一面を次々と知ることになる。

そしてあることをきっかけに、悟、堀、かなえが知らず知らずに心の底に沈めていた本心(アンダーカレント)と、各々がひた隠しにしていた事実が浮かび上がっていく。

以下に、印象に残ったワンシーンと、この作品のテーマ「人をわかるってどういうことですか?」について思うことを書きます。

この映画は優れたラブストーリーだと思いました。物語の終盤、かなえは失踪していた夫の悟と再会します。悟はもう、元の鞘に収まるつもりはありません。かなえは言います。「最後に思いっきりひっぱたいていい?」。悟はビビります。『ホントにひっぱたくはずないでしょ』とかなえは悲しく思いながら、自分がかけていたマフラーを、悟にかけてあげます。美しい別れのシーンだと思いました。そして悟にとって、ひっぱたかれるより痛いだろうなあと思いました。

この映画は「人をわかること」ではなく、「わかろうとすること」を丹念に描いています。人は自分のことだってよくわかりません。だから「あなたのことはなんでもわかる」と言われると、微かにイラっとします。「何がわかるんだよ」と思います。少なくとも慰みにはなりません。だけど「わかろうとしてくれたり」、「知ろうとしてくたり」する姿を見ると癒されることが多いです。それが、他人を思いやる本質だと思います。

他人のことを想う(思いやる)きっかけになる映画でした。

おうちカフェ さんちゃん

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