『アリス』の「チャンピオン」を聴きながら
バンド『アリス』のリーダー、谷村新司さんがお亡くなりになりました。私くらいの年代の多くの者は感慨深く受け止めたと思います。私もそうでした。
『アリス』の「チャンピオン」が大ヒットしたのは1978年。中学生か高校生の頃でした。そのときは「これはフォークというよりロック。面白い唄だな」と思いました。
再び「チャンピオン」に興味をもったのは大学生のときでした。大学の図書館で、作家の沢木耕太郎さんが、カシアス内藤さんというボクサーに密着取材して書き上げた『クレイになれなかった男』(『敗れざる者たち』に収録)を読みました。アリスの「チャンピオン」はボクシングのベテランチャンピオンが若き挑戦者に敗れゆく姿を表現した曲です。そしてそのモデルはカシアス内藤さんだと知ったのです。
この作品では、恵まれた才能を持ちながら、あと一歩の処でチャンスを掴み切れなかった内藤さんが主人公で、カシアス・クレイ(モハメドアリ)や『あしたのジョー』の主人公・矢吹丈と対比させることで「燃え尽きたい」と願っても「燃え尽きることができない」悲哀を描いています。
「これを一つの唄にする、谷村さんの目の付け所は凄いな」と思いました。
以下に谷村新司さんが作詞した「チャンピオン」の一部を抜粋して紹介します。
君はついに立ち上がった 血に染まった赤いマットに
わずかに開いた君の両目に 光る涙が何かを語った
獣のように挑戦者が おそいかかる若い力で やがて君は静かに倒れて落ちた 疲れて眠るように
わずかばかりの 意識の中で 君は何を考えたのか [you're King of Kings]
立たないで もうそれで充分だ おお神よ 彼を救いたまえ
谷村新司さんは、日本ポップス界の「チャンピオン」でした。ご冥福をお祈りいたします。
今日の切り絵は、闘いを終えたボクサーのグローブです。
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