「自由からの逃走(作者 エーリッヒ・フロム(1900~1980))」を読んで
「自由からの逃走(作者 エーリッヒ・フロム(1900~1980))」を読んで
(本の紹介)
第二次世界大戦中の1941年に刊行された古い本です。著者のフロムは、ナチスの迫害を逃れアメリカに渡り本書を執筆しました。フロムは「私たちは、自分を自由だと思っているが、それは本当なのか」と疑います。近代人が自由を獲得したのなら、一時的とはいえ、なぜドイツの人々はヒトラーに魅了されたのか。フロムは、ファシズムを受け入れた人々の心の在り方を探ります。今、読んでも、十分に示唆に富む世界的名著です。
(感想など)
難解な本です。ここでは印象に残った文章を抜粋し、読み易くして、紹介します。フロムは『自由』について以下のように書いています。
「個性に目覚めた人間は、自由を得て、自我の意識を膨らませた。そしてそれは、孤独や不安を増すことになった。自由であることは、孤立無援ということである。多くの人が孤独を恐れるのは、人間は他人との協働がないと生きられないからだ。孤独のなかで、逞しく生きるには、内面の強さが必要だ。孤独の不安に耐えられない人は、自由を重みと感じてしまう。そしてやがて放棄する」。
なるほどと思いました。そして「自由からの逃避」には2種類あると考察しています。そのひとつを要約して紹介します。
「ひとつは、自由を捨てて、自分に欠けているものを得るために、他人たちと自分を融合させようとする傾向だ。そのときには、そこにある権威を意識せざるを得ない。そしてときに、自分も権威になることを願う。それは、自由の対極にある権威主義に結びつきやすい」。
そのとおりだと思います。
さて、最後に読書について書きます。古い書物を読むことは面白いです。知識は時が過ぎていくと古くなります。そして新しい知識が必要とされます。私は勤め人だったとき「仕事に必要な知識は、仕事が教えてくれる」と信じていました。それで困ったことはありませんでした。
でも、人生において、それで十分なのかなと、この頃、思います。人間として不可欠な素養を育むために、名著と言われるものに、これからも触れていきたいと思います。人が何を考え、何に悩み、どう生きてきたかの記録がそこにあります。「学ぶものがたくさんある」と思うとうれしくなります。
今日の切り絵は、逃げるウサギです。
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