小説「東京都同情塔」を読んだ!

「東京都同情塔」は、九段理江さんの小説です。第170回芥川龍之介賞を受賞しました。ディストピア小説、SF小説、社会風刺小説など様々な側面を持つ作品として読むことができます。

(あらすじ)

舞台は、寛容論が跋扈(ばっこ)する近未来の東京。AI技術の発展、刑務所制度も改革される。そして政府は新たな刑務所「シンパシータワートーキョー」の建設を決定する。

主人公は、37歳の女性建築家・牧名沙羅だ。仕事熱心で優秀。一方、人間関係には不器用である。ある日、牧名はシンパシータワートーキョーの設計コンペに招待される。

この建物は、従来の刑務所とは異なり、犯罪者を更生させるための施設だ。受刑者は個室を与えられ、AIによるカウンセリングや教育プログラムを受けることができる。また、施設内には図書館やジム、カフェなども設けられ、受刑者が社会復帰に向けた準備をすることができる。「恵まれない環境が、その人を犯罪者にしてしまったのだから」というシンパシー(同情)をコンセプトにしている。

牧名は、シンパシータワートーキョーの設計に携わることで、様々な葛藤を抱える。しかし犯罪者の置かれた状況や社会の矛盾も知ることになり、携わることを決意する。牧名は仕事と自身の信条の間で揺れ動く。彼女は寛容論を唱える社会風潮に疑問を感じながらも、シンパシータワートーキョーの設計という仕事を通して、社会に貢献したいという思いもある。彼女は安易にカタカナ語を使うのは好まない。「シンパシータワートーキョー」を「東京都同情塔」と呼び続ける。

作中には、AI技術の発展に伴い、人間とAIの関係性についても描かれる。AIは犯罪捜査や刑務所運営に活用される一方で、その万能性ゆえに人間の存在価値が問われる場面も見られる。

建設が進む中、牧名は様々な困難に直面する。しかし粘り強さと信念で、困難を乗り越えていく。シンパシータワートーキョーは完成し、新たな時代を象徴する施設としてその役割を果たしていくが…。

(感想)

(多様性と寛容の欺瞞性) 「東京都同情塔」は、一見すると多様性と寛容を尊重する社会を描いているように見えます。しかし作中、その理想的な社会の背後に潜む欺瞞性が巧みに描かれます。例えば、主人公の牧名沙羅は、寛容論を唱える社会風潮に疑問を感じています。彼女は、誰もが異なる意見を認め合う社会は一見理想的に見えるものの、実際には多数派の意見に押しつぶされてしまう可能性があると考えています。そして作中、差別や偏見が依然として存在しています。例えば、受刑者たちは、犯罪者というレッテルを貼られ、社会から排除されています。

(AI技術と人間の関係) 「東京都同情塔」では、人間とAIの関係性についても描かれています。作中には、AIが犯罪捜査や刑務所運営に活用される場面が描かれます。AIは人間の能力を超える精度で犯罪者を検挙したり、受刑者に最適なカウンセリングを提供したりします。しかし、万能性ゆえに、人間の存在価値が問われます。例えば、牧名はAIに頼りすぎて、自身の判断力を失ってしまうのではと不安を感じています。また、AIが人間を支配するのではないかという恐怖感も感じます。

作中で描かれる様々な葛藤や矛盾は、現代社会における私たち自身の姿と重なる部分も少なくありません。この小説は、私たちが、未来の社会について考えるきっかけになると思います。

「バベルの塔の再現。」という言葉でこの小説は始まります。今日の切り絵です。

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