子弟関係について

この夏、繰り返し読んだ本に「柿の種」(著 寺田寅彦 1878年~1935年)という随筆があります。寺田寅彦は日本を代表する物理学者であると同時に、一流の随筆家です。言葉の使い方が見事で「天災は忘れた頃にやってくる」というのも彼が残した言葉です。「柿の種」は前書きに、「心の忙(せわ)しくない、余裕のある時に、読んでもらいたい」とあります。大正時代から昭和初期に書かれたものですが、今の人が書いているような平易な言葉で、温かで素直な随筆が並びます。

彼が生涯、師と仰いだ人は二人いて、その一人は文豪、夏目漱石です。随筆中、「夏目先生が…」と幾度か出てきて、「誰だろう」と思っていたら、途中で夏目漱石だと気づきました。物理学者の尊敬する恩師が、文豪だったというのは、あっぱれな事実です。

さて「柿の種」のなかに「先生」と「弟子」の関係の定義について、以下のように書かれていました。「もし、その先生に接しなかったら、その弟子の今の姿はないこと」。強烈な素敵な子弟関係ですね。現代において、成立しにくい関係です。でも立派な「先生」が減ったのではなく、そういう気持ちを「弟子」に抱かせないような、社会の風潮が増したのだと思います。

「恩師」と呼べる人がいない人生は、不幸だと思います。

今日の切り絵は、夏目漱石(あまり似ていないけど)です。

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