牛飼い
私の妻の実家は酪農を営んでいます。かなり広大で、都心から最も近い牧場としても知られています。
義父は己のことを「牛飼い」と言います。「酪農家とは言わないんだ」と当初、思いましたが、いつしか慣れました。そして今回、「牛飼い」という言葉の由来を調べてみました。
「牛飼い」というのは、古風な言葉だそうです。牛を使う職業は、古い時代には「牛飼い、牛使い」などと呼ばれていて身分が低く、対して和歌を詠むのは多くが貴族などの身分の高い人々でした。義父は、自分をあえて「牛飼い」と言うことで、庶民である「牛飼い」の意地を示しているように思います。
「野菊の墓」で有名な小説家の伊藤左千夫(1864年~1913年)は、歌人でもあり、こんな歌を残しています。
『牛飼が 歌よむ時に 世の中の 新しき歌 大いにおこる』
現代語訳と意味:牛を飼うような職業の人間が、歌を詠む時代には、新しい歌がたくさん生まれる。
さて、伊藤左千夫は酪農家でもあり、乳牛を育て牛乳を販売する仕事もしていました。
この歌は、彼が歌人の正岡子規に弟子入りした際に詠んだものです。「今日から歌人としての自分がスタートするのだ」という意気込みとともにこの歌を作ったのでしょう。
「身分が高くもなく、雅な職業でもない牛飼いである自分が歌を詠むような、そんな世の中には、今までになかったような新しい歌がたくさん生まれるのだ」という気持ちを率直に詠んだ、希望に満ちあふれた前向きな印象の歌です。
今日の写真は、大晦日に妻の実家の牧場で撮った牛の写真です。
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