ピアノの音

好きなテレビ番組のひとつに、NHKのBSで放送される『駅ピアノ・空港ピアノ・街角ピアノ』があります。日本や世界各地の駅や空港、その他公共スペースに置かれたストリートピアノ(街角ピアノ)に定点カメラを設置し、思い思いにピアノを演奏したり、その音色に耳を傾ける人々の様子が紹介されます。ナレーションがないところも好きです。ポツンと置かれたピアノに、人が引き付けられて、音を奏で始める様子がいいですね。

さて、芥川龍之介(1892年~1927年)の『ピアノ(1925年)』という短編小説を知っていますか。廃墟にポツンと置かれたピアノの話です。なんてことはない静かな物語。こんなあらすじです。

ある雨の降る日、私は用事を済ませに出かけた。すると関東大震災後で崩れたままの家が見えた。そこには、野ざらしの中でピアノが置いてあった。私が通りかかると突然ピアノが鳴った。曲ではなく一音だけ。不気味に感じて足早に帰ったが超常現象とは考えたくなかった。

5日後、同じ用件のためにその崩れた家を通った。今度は通り過ぎずピアノの傍に来た。ぼろぼろのピアノ。鍵盤を押しても鳴りそうには見えない。「これでも鳴るのかしら」と呟くと、また一音鳴った。私の疑問を叱るかのように。しかし私は驚かなかった。微笑みまで浮かんだ。

傍には落ち栗が転がっていた。見れば栗の木がピアノに覆いかぶさっていた。もうどうでもよかった。私はピアノを見つづけた。

不思議な味わいの物語です。「ピアノは、ピアノとして世に出たのだから、朽ち果てそうでも、音を出したかったのでは」と私は解釈しています。

今日の切り絵は、ピアノです。

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