知恵とか勇気とか…

人は諍いを避けられないときがあります。私はそんなとき、塚原卜伝(1489~1571)の「無手勝流(むてかつりゅう)」の逸話を思い出します。こんな話です。

『あるとき卜伝が船に乗っていると、狼藉者の武士が卜伝に決闘を申し込んだ。卜伝は挑戦を受け、船頭に「近くの島へ行ってくれ」と頼んだ。島に着くと、武士は「さあ、勝負だ」と先に島へ飛び降りた。ところが卜伝は船から降りず、そのまま船を漕がせて島から離れてしまった。残された武士は怒るが、卜伝は「戦わずして勝つ。これが無手勝流だ」と言った』。

この逸話の面白さは、その武士は「剣の腕でどちらが上かを決めよう」と考え、一方、卜伝は「そもそも、こいつと命を懸けて斬り合う必要があるのか?」と考えていたところです。結果として、卜伝は決闘そのものを成立させないことに成功しました。

ポイントは、卜伝は剣豪だったことです。その武士と戦ったら、造作なく勝利したでしょう。でも強者なのに、武力ではなく、知恵を使い、戦いを回避したところが立派です。

もう少し考えてみます。戦いを挑まれた者が、卜伝のような強者ではなく、弱者だった場合はどうでしょう。弱者が、力のある者、権力者などと戦わなければならない場合です(多勢に無勢も含む)。でも所詮、強い弱いは相対的なもの。胆力の問題だと思います。不利でも、冷静に踏みとどまる心の強さと知恵があれば、結果は期待できます。今日の写真は、茨城県鹿嶋市で写した塚原卜伝の銅像です。

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