映画『銀平町シネマブルース』を観て
映画館を舞台にした映画(以後、映画館映画と表記)です。私は映画館映画が好きです。映画への愛が詰まっていて、ハズレが少ないからだと思います。
洋画だと『ニュー・シネマ・パラダイス』、『カイロの紫のバラ』、『マジェスティック』等を思い出します。邦画だと『虹をつかむ男』、『カーテンコール』、『キネマの神様』等です。
映画館映画には、客があまり入らない映画館を再興させる内容のものが多いと思います。この『銀平町シネマブルース』も同様です。そして他の映画館映画と一線を画しているところは、登場人物の生活環境の悲惨さを、とてもリアルに描いています。この映画の監督(城定秀夫さん)のことを私はよく知りませんが、映画に携わる人たちのお金の苦労を、よく知っている人なのだろうなと思いました。
例えば、黒澤明は民衆を描いた映画監督ですが、彼自身は民衆ではないでしょう。小津安二郎はしみじみとした庶民の生活を丹念に描いたけど、彼は裕福なエリート層でした。そういった巨匠の作品とは少し違った匂いを感じました。もちろんどちらが「良い」とか「正しい」と言っているわけではありません。
さて映画についてです。まずは悲惨な主な登場人物を紹介します。みんな良い人です。
①流浪の挫折したホラー映画監督 ②映画の好きなホームレス ③客がほとんど入らない借金まみれの映画館の支配人 ④給料を貰えない映写技師やバイト料を貰えないバイト ⑤この映画館の常連たち(売れない俳優、売れないミュージシャン、売れない映画ライター、変わり者の中学生) ⑥新人映画監督
次は、あらすじについて紹介します。
『一文無しの元映画監督が、かつて青春時代を過ごした町に帰ってくる。ひょんなことから映画好きのホームレスと、商店街の一角にある映画館の支配人と出会い、そこでバイトをすることになる。同僚のバイトや老練な映写技師、売れない役者、ミュージシャン、そして映画に夢見る中学生ら個性豊かな常連客たちと交流していくなか、彼は映画を作っていた頃の自分と向き合い始める…』
『シネコン』の対極に『ミニシアター』や『名画座』があります。
『タリーズコーヒー』や『スターバックス』、『デニーズ』の対極に『純喫茶』や『おうちカフェさんちゃん』があります。
『超大作』や『話題作』、『大ヒット作』の対極に『なかなか観られない作品』があります。
この映画のタイトルは『銀平町シネマブルース』です。では『ブルース』ってなんでしょう。
音楽のブルースの根底には、自らの境遇への憂いや嘆き、哀愁が横たわっています。英語では「blues」と表記します。これは blue(青)の複数形です。英語では青色は憂いや悲しみの気持ちを表す色であり、blues にも「憂鬱」のような意味合いがあります。
人はそれぞれ、心に『ブルース』をもって、映画と向き合うのではないかと思います。黙って、映画と会話をするために映画館に出かけます。そして親友のような映画に出会うのではないかと思います。
人が愉しみや安らぎを見つけるのは、必ずしもメジャーで、人がたくさんいる場所ではないでしょう。
今日の写真は『銀平町シネマブルース』のパンフレットです。下方にあるサインは、この映画の主演 小出恵介さんの直筆です。お店のロフトの本棚に置いておきますね。
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