顔扇風機
「顔扇風機(かおせんぷうき)って今、流行っているの?」と妻に聞いたら、「何、それ?」と言うので、「ほら、若い女の子が、街中で手に持って顔に風を送っている小さい扇風機」と答えたら、「ああ、あれね。でも顔扇風機って呼び方、違うと思うよ」と言われました。というわけで呼び方を調べてみました。
携帯扇風機、手持ち扇風機、小型扇風機、ミニ扇風機、ハンディ扇風機、ハンディファン…と色々でした。
私は使ったことがないのでその効能はわかりません。でも近頃、街で見かけるようになった新しい風習であることに違いありません。
「どのくらい涼しいの?」とか「持ち歩くのは面倒臭くないの?」とか「今日、ずっとやり続けるの?」と聞きたいことは幾つもあります(聞かないけど)。
というわけで、顔扇風機を使っている方の様子を、そっと観察しました。ひとりで歩いている人のなかで、顔扇風機を使っている方は、かなりの割合で無表情です。周りは炎天下で顔をしかめているのに、特筆すべき特徴です。
理由は2つ考えられます。一つ目は本当に涼しいから、顔をしかめる必要がない。二つ目は化粧をした顔の現状保持。顔扇風機で汗を抑えて、加えて無表情でいることでその状態を継続する。
私は二つ目のほうが本質に近いような気がします。大切な誰かに会うまでのプロセスなのではないか。いじらしいですね。能面のように顔のパーツは動かしません。人間の動きは、それぞれが関連しています。だから顔扇風機を使用している彼女(ときに彼)の動きは、重心の高さを変えずに体重移動し、静々と歩を進める能役者につながるように思います。それはそれでいいような気がしています。
今日の切り絵は、顔扇風機です。
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