映画「こんにちは、母さん」を観て

劇作家、永井愛さんの傑作舞台の映画化です。年老いた母親役を吉永小百合さん、息子役を大泉洋さんが演じるハートウォーミングな作品でした。私はこの作品の舞台を2004年に観ています。そのときは、年老いた母親役を加藤治子さん、息子役を平田満さんが演じていました。「映画のほうが、舞台よりしっとりした感じになっているな」と思いました。あらすじを紹介します。

神崎昭夫は大会社の人事部長として日々神経をすり減らしていた。久しぶりに母・福江が暮らす東京下町の実家を訪れる。「こんにちは、母さん」と声をかけるが、割烹着を着ていたはずの母親が、艶やかなファッションに身を包み、髪色も変え、イキイキと生活していた。

「一緒にご飯を食べに行こう」と誘うが、今からボランティアの集まりがあると断られた。そこへメンバーが訪ねて来た。そこには教会の牧師でもある荻生直文もいた。昭夫はいづらくなり、家に帰った。

帰宅した昭夫に、別居中の妻から電話があった。大学生の娘・舞が3日も帰ってこないとのこと。驚いた昭夫は実家に行くと舞がいた。「大学がつまらない」と母に訴えたら、父のような大会社に入るか、大会社の人間と結婚するしかないと言われ傷ついたと泣いた。舞は実家でしばらく世話になることになった。

人事部長の昭夫は、リストラ勧告を受けた同僚の木部富幸から問い詰められた。木部は学生時代からの友人だ。説得するがうまくいかない。木部は「仕事を取り上げられてもいい」と会社に居座った。

一方、福江は萩生に恋をしていた。ある日、福江は彼の履物をミシンで作ってあげた。それを見た舞は、祖母の恋を応援した。舞が「いつ告白するの」と聞くと、福江は「言われるまで待つの」と答えた。

舞から福江が萩生に恋をしていると聞き、「やめてくれよ!」と昭夫はぼやく。自分は離婚問題や娘との関係に悩んでいるのに、母が恋をしていることに呆れた。

ある日、木部は上司にケガをさせてしまう。木部は自分が進めていたプロジェクトだから会議に参加したかった。しかし追い出され、そのときドアを閉めたら、上司の腕がたまたま挟まってしまったのだ。上司にケガさせた木部は懲戒解雇されてしまいそうになる。しかし、昭夫は、木部を依願退職とし、就職先まで見つけてあげた。そのかわり自分が会社をクビになった。昭夫は人事部長という立場に疲れていた。退職を決意し、憑き物がとれたように穏やかになった自分を感じた、木部は昭夫に感謝した。

福江はある日、萩生から「北海道の教会に行くことになった」と告げられた。福江は泣いた。萩生が旅立つ日、みんなで教会から見送る。車に乗った萩生に「思わず私を北海道に連れてって」と福江は言ってしまうが、すぐに冗談とごまかした。

花火大会の日、母は酒を飲んで酔っていた。そこへ昭夫がやってきて、2人で酒を飲む。失恋した福江と、妻と離婚し職も失った昭夫は、一緒に花火を見る。福江は「あんたが産まれたのも花火の日だった」と話し、一緒に新しいスタートを切ることを誓った。

この映画の山田監督は今年92歳です。老若男女の人生を、生きる喜びと悲しみを、見事に描いています。

老いらくの恋を、控えめな微妙な心の距離を置いて描写することで、上品な気品を感じさせてくれます。

息子の昭夫は、離婚し職も失いました。勿論、あたふたします。困難な状況ですが、彼は魅力的でした。人の本質、「困った人がいたら助ける」ことを忘れないからです。上品な生き方だなあと思いました。

映画を観終わって、宮沢賢治のこんな一節を思い出しました。

「もう、決して淋しくはない。何べん、淋しくないと云ったことで、また淋しくなるのは決まっている。けれどもここはこれでいいのだ。全て淋しさと悲傷とを焚いて、人は透明な軌道をすすむ。」

おうちカフェ さんちゃん

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