コスモスの花
コスモスの花が好きです。ひょろっと、風に吹かれている様子を見ると「秋が来たなぁ」と思います。そしてコスモスの群生を見ると不思議な気分になります。「いかようにも見えるなあ」と思うのです。
太宰治の短編に「ア、秋」という作品があります。主人公は注文に応えて詩を作る本職の詩人。いつどんな注文にも応えられるように、詩材をまとめたノートを用意しています。この短編には、そのノートを見ながら振り返っている場面を描かれます。以下のフレーズが有名です。
『トンボ。透き通る。コスモス、無残。芸術家は、いつも、弱者の友であった筈なのに』。
太宰治はコスモスを無残なものとして描いています。
一方、野口雨情は以下の詩を書いています。
セイタカコスモス(作者 野口雨情「朝おき雀」より)
セイタカ コスモス セイクラベ :背高コスモス 背比べ
オテテヲ アゲテモ トドカナイ :お手々を あげても 届かない
タカイナ タカイナ カテナイナ :高いな 高いな 勝てないな
ワタシノ セイデハ カナハナイ :私の 背では かなわない
興味深いですね。太宰が無残と評したコスモス。野口はのどかな夢の国の花のように描きます。人の見方はそれぞれだなあと思います。そしてコスモスは懐の深い花だとしみじみ思います。
0コメント