牛
妻の実家は酪農を営んでいます。明日(3/20)の春分の日は、お墓参りを兼ねて訪れる予定です。広い土地では、たくさんの牛が放牧されています。牛の動く様子は、機敏というものではなく、見ていると、ゆったりとした気持ちになります。
高村光太郎(1883年~1956年)に「牛」という詩があります。「牛」の様子を描写しながら、自分らしく生きることが大切さを教えてくれているようで、好きな詩です。115行にも及ぶ大変長い詩です。最初の部分のみを紹介しますね。それでも世界観は伝わってくると思います。
『牛』(高村光太郎 1913年)
牛はのろのろと歩く
牛は野でも山でも道でも川でも
自分の行きたいところへは まっすぐに行く
牛はただでは飛ばない
ただでは躍らない
がちりがちりと
牛は砂を掘り土を掘り石をはねとばし
やっぱり牛はのろのろと歩く
牛は急ぐことをしない
牛は力いっぱい地面を頼って行く
自分を載せている自然の力を信じきって行く
ひと足ひと足牛は自分の力を味わって行く
ふみ出す足は必然だ
うわの空のことではない
是が非でも出さないではたまらない足を出す牛だ
出したが最後 牛は後へはかえらない
そして やっぱり牛はのろのろと歩く
牛はがむしゃらではない
けれどかなりがむしゃらだ
邪魔なものは二本の角でひっかける 牛は非道をしない
今日の切り絵は、妻の実家にいる牛の顔です。
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