長崎・浦上天主堂(長崎の鐘・パンドラの鐘)を訪れて!(長崎旅行③)

「長崎の鐘」と言えば、原爆の爆心地に近い浦上天主堂の鐘をいいます。原爆によって鐘楼が倒壊した後に、瓦礫の中から鐘が掘り出されました。そして修復が施され、現在も鳴らされています。この鐘をモチーフにした傑作舞台があります。私は1999年に、劇作家・野田秀樹さんの書きおろした『パンドラの鐘』(蜷川幸雄演出)を観ました。野田秀樹さんは長崎県出身です。つまり『パンドラの鐘』は『浦上天主堂の鐘』です。こんなあらすじでした。

太平洋戦争開戦前夜の長崎。ピンカートン財団による古代遺跡の発掘作業が行われている。考古学者カナクギ教授の助手オズは、土深く埋もれていた数々の発掘物から、遠く忘れ去られていた古代王国の姿を、鮮やかによみがえらせていく。王の葬儀が行われている古代王国。兄の狂王を幽閉し、妹ヒメ女が王位を継ごうとしているのだ。従者たちは、棺桶と一緒に葬式屋も埋葬してしまおうとするが、ヒメ女はその中の一人ミズヲに魅かれ、命を助ける。ヒメ女の王国は栄え、各国からの略奪品が運び込まれている。あるとき、ミズヲは異国の都市で掘り出した巨大な鐘を、ヒメ女のもとへ持ち帰るが……。決して覗いてはならなかった「パンドラの鐘」に記された、王国滅亡の秘密とは? そして、古代の閃光の中に浮かび上がった<未来>の行方とは……?

難解なあらすじですね。つまりピンカートン財団(アメリカ)はパンドラの鐘の秘密(原爆製造方法)を知ることを熱望していました。一方ヒメ女(当時の主権者、天皇を投影)は、軍部が手にしていたアメリカからの最後通牒を知りました。そこには「もうひとつの太陽(つまり原爆)」を長崎の鐘に向けて投下すると書かれていたということです。

劇中、ヒメ女の、以下のセリフが痛切で印象的でした。

「この王国は、狂気も敗北も隠し続けることで守られてきた。けれども、パンドラの鐘の音は、すべてをあからさまにする、だからその音色に耳をかさなくてはいけない」。

そして原爆で亡くなったミズヲ(「水を…」と言って、灼熱の爆弾の熱のなかで絶命したから)のこの言葉で演劇は終わります。

「賭けをしましょう。あなたの服に触れず、その乳房に触れた日のように、いつか未来が、この鐘に触れずに、あなたの魂に触れることができるかどうか。滅びる前の日に、この地を救った古代の心が、ふわふわと立ちのぼる煙のように、いつの日か遠い日に向けて、届いていくのか。ヒメ女、古代の心は、どちらに賭けます? 俺は、届くに賭けますよ」。

今日の写真は、浦上天主堂の正面図です。私は演劇を観たときの感動を思い出しながら見上げました。

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