大学入試共通テスト(2025)の「歴史総合、日本史探求」の出題:松本清張
今回の共通テストの新科目「歴史総合、日本史探求」に目を通しました。第6問の出題テーマは、作家「松本清張」の作品に関するものでした。こんな文で問題は始まります。「ハルさんとナツさんの姉妹は、同居する祖母の本棚の整理を手伝うことになった。本棚には松本清張の本が数多くあり、興味を持った(後略)」。まるで物語の始まりです。
そして、松本清張の作品について、問1では短編の「西郷札」、問2では自伝「半生の記」、問4ではノンフィクション「日本の黒い霧」に関係する出題でした。
今日は、そのなかから短編小説「西郷札」について取り上げたいと思います。あらすじを紹介します。
『新聞社に勤める卓次は「西郷札」にまつわる特集を記事にしようと取材を始めた。明治時代の「西郷札」に関する覚書を読んでいくが、なぜか、原本の最後は破られていた。
「西郷札」とは、明治10年に西南戦争で、市民や氏族の不満を背負い新政府と戦った西郷隆盛が、次第に追い詰められ軍資金にも困り、独自で発行した紙幣のこと。西郷隆盛の信用で一時的に流通したが、敗戦により紙くずとなった。派生して宮崎地方には倒産者が相次いだ。以降、様々な悲劇が起きた。そのことを、現代に生きる卓司は、丹念に調べていくが…』。
「西郷札」は松本清張のデビュー作であり、とても優れた短編小説です。「文章や用語の一つ一つを、歴史に照らし合わせ、十分に推敲したのだろうなあ」と推察します。松本清張は、「砂の器」や「点と線」をはじめとする、社会派推理小説家として有名ですが、彼の作品には、歴史を題材にした物も多いです。執筆するとき、彼は下準備のために、地べたを這うように、史実を探ったそうです。
新科目「歴史総合、日本史探求」に「松本清張」を取り上げたことに、出題者側の意図を感じます。清張自身が歴史の探求者だったからです。小説「西郷札」に出てくる新聞記者「卓治」は架空の人物ですが、やはり歴史の探求者です。問題文に出てくる、ハルさんとナツさん姉妹も探求の入口に立ったのでしょう。『~探求』という入試科目の始まりですので、あえてこのような出題にしたと思います。
この傾向が続くなら、近年中に「司馬遼太郎」か「半藤一利」の作品が取り上げられると予想します。
今日の切り絵は、西郷隆盛です。
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