映画『8番出口』を観た
(あらすじ) 主人公の「迷う男」は、地下鉄に乗っていた。車内で、泣き叫ぶ赤ん坊に怒鳴る男の姿を目にするが、彼はイヤホンをつけて意図的にその光景から目をそらす。彼は無職で、喘息に苦しんでいる。別れた彼女からスマホに電話があり、自分の子どもを妊娠したと告げられた。彼は途方に暮れた。
電車を降りた彼は、【出口8】と表示された、地下通路に迷い込む。やがて自分がループしていること、そして同じスーツ姿の無表情な中年男性(歩く男)と何度もすれ違っていることに気づく。壁に貼られた案内板から、彼はこの空間のルールを知る。「異変を見逃さないこと。異変を見つけたら、すぐに引き返すこと。異変が見つからなかったら、引き返さないこと。8番出口から出ること」。
男は地下通路の無限ループからの脱出を試み始める。彼が遭遇する「異変」は、彼の不安とも深く結びついている。それには、微笑みながら近づいてくる「歩く男」、コインロッカーから聞こえる赤ん坊の泣き声、そして凝視してくるポスターの目玉などが含まれる。異変を正しく見抜くたびに、彼は出口の番号が8に近づいていく。しかし、これに気づかなかったときは進行状況をゼロに戻されれてしまう。
主人公は、他の「迷える魂」たちと出会う。彼は、この空間に囚われている少年と遭遇する。最後の通路にたどり着いた主人公は、通路の奥から押し寄せる津波に襲われる。この絶体絶命の瞬間、彼は少年に手を差し伸べ、救おうとする。津波が過ぎ去った後、彼が出口の先に見たのは、地上の街ではなく、再び雑踏に満ちた地下鉄の駅だった。電車に乗り込むと、物語の冒頭と全く同じ光景が広がる。男が泣き叫ぶ赤ん坊に怒鳴っている。しかし今回、主人公はイヤホンをつけて目をそらすのではなく、赤ちゃんの方に歩いていくのであった。
(感想など) フランツ・カフカの不条理劇「審判」や「変身」を想起させる物語です。人間の存在の不安、自己と他者の断絶などを主題としていますが、最期は人と人との結びつきを信じる主人公の姿を描いており、鑑賞後は、明るい光を見たような感じにさせられます。
シンプルで、それゆえ深読みが可能な作品です。私はこの空間のルール「異変を見逃さないこと。異変を見つけたら、すぐに引き返すこと。異変が見つからなかったら、引き返さないこと。8番出口から出ること」がとても興味深いと思いました。人は、昨日までと同じように、今日を生きます。小さな異変を見つけても、何も対応せずに、無視したり、胡麻化したりします。それでは8番出口には辿り着かない。そして無限ループからは逃れられません。
ホラーサスペンスに属する作品だと思います。私の苦手の分野ですが、「ギリギリセーフだな」と思いました。怖がらすことを目的とした作品ではないからです。「なぜ、こんな空間があるのか」とか、「主人公は何か悪いことをしたのか」について一切説明がありません。優れた短編小説のようでした。
主人公「迷う男」役の二宮和也さんの演技は素晴らしい。「歩く男」役の河内大和さんの演技は印象的で、怖かった~。閉ざされた地下通路のなかでの、人物描写が見事でした。
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